ハリスコ新世代カルテル(CJNG)とは

メキシコの麻薬密輸組織というと、老舗のシナロア・カルテルと1、2位を争うのが新興のハリスコ新世代カルテル。シナロアに比べて、その実情はあまり知られていない。シナロアにせよハリスコにせよ、世代交代が話題になっているが、全体像を紹介した記事を見つけたので紹介する。

 

 

ハリスコ新世代カルテル(CJNG)――

一介の武装グループから、世界規模のカルテルに。

 

La Jornada 2021年1月3日　　

https://www.jornada.com.mx/2021/01/03/politica/008n1pol

Gustavo Castillo García

 

「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」はこの10年の内に急成長し、その帝国を築き上げた。もとは、メキシコで古くからの麻薬密輸マフィアのボスのひとり、ナチョ・コロネルことイグナシオ・コロネル・ビジャレアルの下で働く武装グループだった。このボスが2010年7月に殺害されたことから、「ロス・マタセタス(セタス殺し)」と名乗り、ミチョアカン州の麻薬マフィアと連携し、のちにメキシコ国内でももっとも危険で広い地域に勢力をもつグループのひとつにまで成長した。DEA(アメリカ麻薬取締局)はこのグループを、現在世界でもっとも危険な３つの犯罪組織のひとつとみなしている。

連邦検察庁の情報によれば、コロネル・ビジャレアルはシナロア・カルテルに属していたが、仲間のエル・チャポことホアキ・グスマン・ロエラや、エル・マヨことイスマエル・サンバダ・ガルシアから独立しようともくろみ、そのために独自に武装グループを創設した。だがその野望を果たすことなく、2010年7月29日、ハリスコ州サポパンで、メキシコ軍との銃撃戦のなかで殺害された。

 

ロス・マタセタスは当時、「ミレニオ・カルテル」のリーダーだったルイス・バレンシアの親族のアビガエル・ゴンサレス・バレンシアと手を組んだ。ミレニオ・カルテルは、ミチョアカン州、ゲレロ州、タマウリパス州に勢力をもっている。その関係は、「エル・メンチョ」ことネメシオ・オセゲラ・セルバンテスとロサリンダ・ゴンサレス・バレンシア(アビガエルの姉妹)の結婚によって確固たるものとなった。

メキシコの治安当局の多くが指摘するところによれば、そこでひとつの企業体ともいえる犯罪組織に成長するきっかけとなった連携が確立された。つまり、エル・メンチョが作戦と暴力的分野を統率し、一方で義理のきょうだいらが財務、資金洗浄、さらに米国や南米、EU、アジアの犯罪組織との関係を担当するという分担である。

CJNG: así construyó su imperio uno de los cárteles más sanguinarios del mundo - Infobae

 

 

2010年から2014年の間に、CJNGはロス・セタスの支部が支配していたベラクルス州、ゲレロ州、オアハカ州で勢力争いを開始した。のちにはナヤリ州、コリマ州、チワワ州、バハ・カリフォルニア州、サカテカス州にまでその勢力を拡大していった。

現在、治安当局の情報によると、少なくとも国内32州のうち28の州で勢力を持っている。そのうち、メキシコシティでは、「アンチ・ウニオン・テピート」と連携し、ゲレロ州やモレロス州では、もとはベルトラン・レイバ兄弟カルテルの仲間で、「ロス・ロホス」と敵対する犯罪組織、「ロス・アルディジョス」のような地元の犯罪グループと手を組んだ。さらにこの地域では「ゲレロス・ウニードス」とも協力関係を維持している。

CJNGが影響力を拡大するためにとった戦略のひとつが、地元グループに圧力をかけ、それらのグループに自分たちの名前を使わせるというものである。これは、しばしばその地域に実際の分派を持っていないときに行われる。

CNGJはライバルグループを殲滅するために、その地域の地元グループを支援する。これらの小規模な組織は、それぞれの犯罪から得られる利益から一定割合をCJNGに支払わなくてはならない。これが、エル・メンチョのグループから攻撃を受けないという保証にもなるのだ。

 

CJNGの武力抗争の舞台となる地域には、ハリスコ州、グアナフアト州、ミチョアカン州などがあり、そこでは過去2年の間に何百人もの人々が殺害された。

もっとも激しい抗争が行われているのがグアナフアト州で、地元組織「サンタ・ロサ・デ・リマ」との間で、ぺメックスの送油パイプから燃料を違法に抜き取るという犯罪行為を巡って争っている。

ミチョアカン州では、「ロス・H-3」や「新ファミリア・ミチョアカナ」と呼ばれる地元グループと抗争しており、合成麻薬が生産される地域を奪うことをもくろんでいる。

 

エル・メンチョは、メキシコとアメリカ合衆国の当局から重要なターゲットのひとりと目されている。2018年8月から、メキシコ政府はエル・メンチョの逮捕につながる情報に対して、3000万ペソ(約1億5000万円)の報奨金をかけている。米国麻薬取締局はCJNGのリーダーを重要な捜索対象と位置づけ、2020年3月から2000万ドル(約21億円)もの報奨金を提示している。

 

2016年10月には、アメリカ財務省はCJNGの資金洗浄において協力関係が疑われる個人と法人を150以上リストに上げた。メキシコでは現政権下で、金融情報局(UIF)が率いる調査グループが、ネメシオ・オセゲラの組織に対して、1683の個人や法人の口座を凍結し、その額は10億ペソ(約50億円)にものぼっている。

 

El Cártel Jalisco Nueva Generación ya opera en la CDMX (radioformula.com.mx)

 

Emboscada en Aguililla, Michoacán: qué se sabe del ataque por sorpresa en el que murieron 13 policías, el más mortífero de ese tipo en los últimos años - BBC News Mundo

2019年10月、ミチョアカン州アギリージャで警官隊がCJNGの待ち伏せに遭い、警察官13人が死亡、9人が負傷した。