資金と武器の流通ルート

<現金の流れ>

モノが南から北に運ばれそこで売られれば、その代金は北から南に、逆のルートをたどって運ばれてくる。さらに麻薬取引のような違法な商売には、強力な武器が欠かせない。

麻薬の代金は、商取引を装うなどしてマネーロンダリング(資金洗浄)され、カルテルの手に渡るが、金融機関などのチェックは近年ますます厳しくなっている。カルテルは金融機関と連携するなどもしているが、電子取引にもリスクは伴う。その一方で、昔ながらのローテクもよく使われるようだ。現金を手持ちでメキシコに持ち込むのだが、アメリカからメキシコへ自動車で入国する際、手荷物や車両の検査はほとんどされないため、大量の札束をスーツケースに詰めて運ぶこともしばしばある。航空機で利用して現金を搬送することもあるが、こちらは普通、手荷物検査などがあるので発覚することもある。

<武器の流れ>

 武器に関しては、メキシコでは合法的に武器を購入、所持することには規制が厳しく容易ではない。その一方、アメリカでは州にもよるが、殺傷能力の高いけん銃やライフルであっても簡単に入手することができる。多くの銃器がアメリカ領内で合法的に入手され、それがメキシコに運ばれる。

たとえば、銃の購入が非常に容易なテキサス州で、借金などで現金が必要な、前科のない人が頼まれてガンショップに行き、ライフル・ピストル・リボルバーなど10丁以上と大量の銃弾を購入する。身分証明書さえあれば問題なく買える。それを依頼人に渡して手数料として500ドルを得る。依頼人は同じ手口で買い集めた武器と一緒に運び屋にメキシコへ運ばせる。国境を超えるさい、車1台につき積み込むのは4丁まで。4丁なら万一、武器の密輸が見つかっても軽犯罪ですぐ釈放されるが、5丁だと重犯罪となるからだという。

メキシコで犯罪組織はそれを購入し、シリアルナンバーを消して使用する。

 

実際にはメキシコの犯罪組織には、アメリカ以外にアジア、アフリカ、中南米からも武器は入ってきており、また賄賂をもらったメキシコ軍幹部が軍の備品を横流ししていることもある。カルテルが使用する武器の9割がアメリカで購入されたものだという説もあるが、シリアルナンバーがないので、実際にどこから来たものかは証明できないのが実情である。いずれにせよ、大量の銃器が北米からメキシコに流入しているのは事実だが、全米ライフル協会など、アメリカでの武器の販売に規制をかけることに反対する勢力は強く、北からの銃の流入は止めようがない。