用語集

「ナルコ narco」

Narcotráfico(麻薬密輸)から派生して、narcoだけで「麻薬密輸」や「麻薬密輸人」を指す。さらにさまざまな単語の頭について派生語を作る。Narcocorrido(ナルコの歌、民謡), narcomensaje(麻薬組織が残すメッセージ。しばしば殺害した遺体に付けられる), narcomanta(麻薬組織が掲示する横断幕), narcofosa(麻薬がらみで殺害された人が埋められた秘密墓地), narcotumba(大物マフィアの豪華な墓), narcoabogado(マフィア側の弁護士)etc.

「カルテル cártel」

麻薬密輸を行う大規模な組織。メキシコでは、シナロア・カルテル、ファレス・カルテル、ゴルフォ・カルテルなど、地名を冠したものが多い。地域と結びつき、親族ネットワークを基盤とした、メキシコ的な社会組織の上に成り立っていることが多いが、そうとも限らない。「ロス・セタス」は地域にも親族ネットワークにも根差していない。

またカリスマ的なボスを頂点とした、トップダウンの独裁的な構造がイメージされるが、それは部分的なものである。実際は、幅広い中小のグループの緩やかなネットワークでできている。まさに戦国時代の様相を呈し、そのときの状況に応じて「敵の敵は味方」の論理から互いに連帯したり、何かのきっかけで系列グループが敵対するようになったり、ひとつの組織が分裂したりと常に変化している。

「プラサ plaza」

カルテルが支配する「縄張り」。密売を独占的に行う地域と、密輸のための経由地を結んだルートをも指す。地理的な「面」であると同時に、「点」と「線」が重要な要素。支配下にある小規模な密輸人グループに仕事をさせ、密売人からはショバ代を受け取る。プラサでは、多くの場合、地域の軍司令官、警察組織、公務員などの多くもカルテルの支配下にある。

カルテル同士のプラサの奪い合いでは激しい抗争が起こるため、犠牲者を減らすために各カルテルのトップが一堂に会した会議(narcocumbre=ナルコサミット)を行うこともしばしばある。