メキシコ報道界の勇気ある2人の女性

 

 麻薬マフィアに関連した暴力が拡大するにつれ、それを報道しようとする報道関係者の間でも犠牲者が次々に出るようになってきた。今日ではメキシコはジャーナリストにとって世界でも12位を争う危険な国とされる。毎年何人ものが惨殺され、行方不明となっており、新聞やテレビなどマスコミも脅迫を受け、マフィアに関連する報道を控えるようになってしまった。

 

 メキシコ国立人権協会によると、2000年から2014年218日現在までに、88人の報道関係者が殺害され、少なくとも16人が行方不明になっているという。

 もっとも最近の犠牲者はベラクルス州の『ノティスル』紙記者グレゴリオ・ヒメネスで、201425日に自宅から拉致され、6日後に惨殺され、ほかの2つの遺体とともに穴に埋められているのが発見された。ヒメネスはマフィアによる不法移民誘拐に関連する記事を書くなどして脅迫されていたが、警察は隣人との間の個人的なトラブルによるものと発表した。

 

 ジャーナリストのなかには当局から恣意的に拘束され、麻薬密輸マフィアに関連したという濡れ衣を着せられて収監されたケースもある。ミチョアカン州で地元紙の編集長だったヘスス・レムス・バラハスは、2008年に逮捕され、拷問されて麻薬密輸組織の一味であると告白させられ、重犯罪者向けの刑務所に3年余り収監された。その間の手記を2013年に刊行している。

 

 このような状況の中で委縮しがちなメキシコのジャーナリズムの世界にあって、果敢に報道活動に取り組む2人の女性がいる。そのひとりが、2010年にメキシコでベストセラーになったLos señores del narco (英語版Narcoland: The Mexican Drug Lords and Their Godfathers)を出版したアナベル・エルナンデスで、2012年に世界新聞・ニュース発行社協会(WAN-IFRA)から「自由の金のペン賞」(Golden Pen of Freedom)を授与されている。

 

アナベル・エルナンデスは、逮捕されたホアキン・グスマンをはじめとする麻薬マフィアらと政府・警察・企業などとの癒着の実態を暴露した。その後も度重なる殺人予告や脅迫、嫌がらせを受けながらも精力的に取材と執筆活動をつづけている。

彼女の授賞式でのスピーチがあまりに感動的なので訳したいと思ったのだが、もうすでにネット上で日本語訳されていたのを発見。素晴らしいものを目にすると、同じことを考える人はいるものだ(^_^;)。

 

訳はこちらで読んでください。↓

 

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kobayashiginko/20121022-00022159/ 

 

もうひとりの女性ジャーナリストは、メキシコ北部国境沿いの街ティフアナで、麻薬カルテルや政治腐敗を精力的に報道する雑誌『セタ』の編集長、アデラ・ナバロ・ベジョ。麻薬マフィア関連の報道においてメキシコを代表するジャーナリストのひとりだったヘスス・ブランコルネラスらが創刊したセタ誌で働き、ブランコルネラスが病気で亡くなったあとを継いで編集長に就任した。

 

2007年にジャーナリスト保護委員会CPJから「国際報道の自由賞International Press Freedom Awards)」を受賞、2011年に国際女性メディア基金(International Women's Media Foundation )から「勇気あるジャーナリスト賞(Courage in Journalism Award)」を受賞した。さらに2013年には雑誌『フォーブス』が「メキシコでもっともパワフルな50人の女性」のひとりに選んでいる。

 

アナベル・エルナンデス http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anabel_Hernandez.jpg
アナベル・エルナンデス http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anabel_Hernandez.jpg
アデラ・ナバロ・ベジョ http://en.wikipedia.org/wiki/File:Adela-Navarro-Bello.png
アデラ・ナバロ・ベジョ http://en.wikipedia.org/wiki/File:Adela-Navarro-Bello.png