カルテルとカポたち

メキシコのカルテル(麻薬組織)と著名なカポ(マフィアのボス)に関しては、Wikipediaほかいろいろなサイトで取り上げられている。とりあえず、ここでは特徴的な組織と人物を取り上げるにとどめておく。

カルテル間の対立や連帯の関係は、まさに仁義なき世界の戦国時代であるだけに始終変わっているので、ここで書いたこともすぐに古くなっていることを割り引いて読んでいただきたい。

 

またカルデロン政権になってから多くのカルテルの大物ボスが逮捕されているのは事実だが、みなシナロア・カルテルの敵だったり、シナロア・カルテルのボス、チャポ・グスマンと反目したメンバーだったりしているのが面白い。実際、大物ボスの逮捕劇は、組織内や敵対組織との間での勢力争いの結果、逮捕につながる情報が警察に流されて実現しているのである。 

政府からの攻撃が一部のカルテルに偏っているという点に関しては、政府は当然反論しているが、実際には複数のカルテルといちいち交渉しにくいので、もっとも勢力のあるシナロア・カルテルとそれに連帯するグループに1本化したいのではないか、というのもけっして憶測とは思えない。実際にシナロアと対立してきたゴルフォ・カルテルは、政府側の集中的な攻撃もあって弱体化している。

現在、残虐さで恐れられるロス・セタスは、実のところ多くの中小のグループを抱えたグループであり、トップによってコントロールできない状況にある。あまりに歯止めのない暴力の連鎖はカルテル側としても避けたいこともあり、ロス・セタスは他のカルテルからも目の敵にされ、攻撃の対象になっている。

 

 ちなみに大物ボスの死亡に関しては、しばしば「本当は生きている」という「都市伝説」が語れる。「銃撃戦で死亡」などとされていても、実際は死体は身代わりのもので本人は生きている、警察も承知の上で口裏を合わせている、というものだ。かつてのコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルに関しても同様だ。

 

メキシコでその代表的なものは、「天空の帝王」と呼ばれた大物カポ、アマード・カリージョ・フエンテスの「死亡」。1997年に全身整形手術を受けている最中に心停止したとされるが、その後の目撃情報もある。また2010年に警察との銃撃戦のなかで死亡したとされる「クリスタルの王」ことイグナシオ・コロネルもまた、残された死体は別人のものだったのではないかと疑われている。

 

各カルテルの勢力範囲。ただし2012年10月のBBCの記事なので、もうだいぶ変わっている。http://www.bbc.co.uk/mundo/noticias/2012/10/121010_mexico_mapa_guerra_narco_carteles_jp.shtml