ラ:ファミリア

 チョアカン州を中心とした麻薬カルテル「ラ・ファミリア」は80年代に作られた。「カルテル」と呼ばれるのを嫌い、自らのグループを「ラ・ファミリア(家族)」と呼んでいる。

 当初はマリワナとケシ(アヘンの材料)栽培のための農民の自衛組織だった。のちに麻薬密輸だけでなく、覚せい剤の製造、海賊版DVDの制作など、麻薬以外のインフォーマル活動も展開する。実際のところ、ミチョアカンでは数少ない地元の有力産業であり、地元ではあらゆる商業活動の8割以上がファミリアとなんらかの関係を持っているともいわれる。

 

ファミリアは収益の中から学校や下水設備の建設、さらには教会への多額の献金なども行っていた。ファミリアは一種の宗教集団でもある。アメリカのキリスト教系新興宗教に似せた自分たちの聖書も持ち、メンバーには酒も麻薬も禁止している。ライバル組織を襲撃し殺害することを「天罰だ」とし、メンバーにはそのあとで祝福を与えるなどしていた。

組織内で出世するには2つの方法があり、ひとつはヒットマンとしてたくさんの敵を殺すこと、もうひとつは聖書をよく学び、信仰の面で尊敬されるようになることだといわれる。

 地縁・血縁と結びついたネットワーク、キリスト教をベースとした共同体的関係など、メキシコの農村部の伝統的な社会関係に根差した組織といえる。