ナルココリード

「コリード corrido」とは、メキシコの民族音楽のジャンルのひとつで、さまざまな歴史上の英雄や出来事、日々の思いなどを歌う「物語りうた」。おもにメキシコの北部で、「ノルテーニョ」と呼ばれるリズムにのせて歌われる。ノルテーニョのバンドは、カウボーイ風のテンガロンハットに派手なスーツというのが定番のスタイルだ。

もともとは読み書きのできない田舎の人々のために歴史や物語を伝えるものだったが、麻薬マフィアがこの地域で力を持つようになってからは、ナルコの「活躍」や「冒険」をさかんに歌うようになり、その手の歌は「ナルココリード」と呼ばれるようになった。ナルコが取引きに成功して成り上がると、金を出して自分の歌を作らせるようになったという。

ノルテーニョの歌手はマフィアと親交があり、敵対するマフィアから疎まれるなどして、多くの歌手が殺されている(2011年8月にも1)。ここ数年来、放送禁止になり、ラジオやテレビでは流れなくなったが、相変わらずアメリカ・メキシコでCDがよく売れ、人気グループはヨーロッパツアーや南米ツアーも行い、各国でそれぞれ人気歌手と共演したりも。酒場などでも流しのミュージシャンがさかんに歌っている。

実際に麻薬取引とは縁のない人々の間でも、「ナルコ」(麻薬マフィア)は、日本のやくざと同様、独自の世界をもち、「ヤバイ」けど「英雄的」で「かっこいい」とも見る向きもある。

 

ノルテーニョの中には大物マフィアの「偉業」をたたえる歌が実際少なくないが、ノルテーニョ=ナルココリードとは限らない。メキシコから北米に移民した人々の悲哀をうたったり、汚職など社会批判をしたりといった歌もある。

代表的なノルテーニョのバンドとしては、たとえばティグレス・デル・ノルテ(北のトラ)など。

こんな感じ→http://lostigresdelnorte.com/main/